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【シリア情勢】サウジ紙が伝える、中東におけるロシア軍の泣き所

突然実施され、突然終了されたロシア軍機によるイラン領内からのシリア空爆に関して、
サウジアラビアの新聞、Saudigazetteが「政治的に敏感で、結果的に成果の上がらない決定は、ロシアの空軍力の限界を露呈させることになってしまい、結局ロシアには新しい戦略を立ち上げる必要性のみが残った」と報じている。

(以下、East Media Newsによる要約)

ロシア軍に関係の深い人物の発言するところによれば、イランからの出撃という選択は、アレッポでの反体制勢力の粉砕という目的を達成しようという目的があった。

記事の伝えるところによれば、ロシアは空爆にかかわる高価な費用を削減するためにイランからの出撃を選択したわけだが、現実にはシリアにおける軍事作戦は分水嶺に来ており、「交渉による解決を模索する時期」に来ていると考えているとのことである。

Saudigazette紙は、ロシア議会で上院外交委員Andrei Klimov氏の発言を伝えて、問題であるのは「シリアでの作戦のコスト」であり、「我々は行動シリアでの作戦を明確な予算の中で実施している。」「国防省は他にも支出を抱えており、それゆえコストの最適化と、最も経済的な道が追求されている。どのような賢明な国であっても、同様のことをするだろう」とする実態を紹介している。

また、ロシアの国防部門に関するアドバイスを行うCenter for Analysis and TechnologiesのアナリストであるVasily Kashinは、ロシアがイランでの基地使用を求めたのは「アレッポでの軍事行動が激化したこと」に関係があり、「シリア、ロシア、イランの司令部の意見として、分水嶺に当たる時期がやってきているとする見方あるように見える」と指摘している。

このような見方の根拠として、Saudigazette紙はロシアとその同盟関係にある武装勢力が、過去二か月においてアレッポを支配下に置こうとする活動を活発化させてきた事を挙げている。

例えば、レバノンのヒズボラのリーダーは、アレッポに更なる戦闘員を送り出すと6月24日に発言しているほか、アレッポでの戦闘は戦略的に重要であると発言している。

また、アレッポの住人と反体制活動家は、シリア軍の低高度爆撃と区別できるロシア軍による高高度ミッションを含む、空爆が激化していると報告している。

そのような航空支援は、反政府勢力の支配地を包囲するシリア政府軍の地上作戦と調和しており、人道支援組織によって、アレッポ市民の犠牲者の増加が報告されると共に、補給の途絶による人道的危機の発生が警告している。

Kashin.氏はイランの空港を利用することができなければ、その分爆弾を減らして燃料を積まなければならず、所定の成果を得るためのコストが上昇してしまう旨、指摘している。

ロシア国防省に近い人物は、ロシアの航空作戦はこのような兵站の問題に直面しており、「我々はそのような多くの航空機を保有しているわけではない」ことを告白している。

一方、アレッポの反体制勢力は空爆が激化する間でさえ、反撃に転じて包囲を突破し、補給路の開通を行っている。

軍事専門家は「ロシアはイランの基地にアクセスしようとそうでなからろうと、シリアにおける爆撃を激化させる能力を有している」と発言するが、これは来月、議会選挙を控えるロシアの予算的制約と、当初のタイムテーブルを超過している実態を無視した発言である。

5月には、プーチン大統領がシリアにおけるロシア軍の「主力」について撤退を開始する予定であることを宣言しており、彼らの仕事は「殆ど達成された」と言う。

同紙は「軍事的前進が困難であるがゆえに、交渉による解決がロシア政府にとって魅力的に映っている」とみている。

ロシアは木曜日、アレッポにおける48時間の人道的停戦と支援の実施に合意しているほか、Lavrov外相とKerry米国務長官との間で停戦の可能性について意見を交換しているが、ロシアと米国それぞれの同盟関係の間には、アサド大統領の未来に関して大きな相違が残されている。

→ Fight for Syria’s Aleppo exposes limits of Russian air power
Saudigazette 2016.8.31
http://saudigazette.com.sa/world/mena/fight-syrias-aleppo-exposes-limits-russian-air-power/


ロシア軍も米軍同様軍事費の問題に直面しており、議会選挙も控える中、コストの上昇を招く行動は好ましくないと考えているようだ。

ロシアにとってシリアは地中海、すなわちNATOに対するプレゼンスを確保する重要な拠点であり、ここの安定を確保することは国家戦略上極めて重要である。

2011年から5年越しで続いているシリア内戦問題のテーマが、「アサドの存続」から「シリアの分裂回避」に変質したのも、結局は米国とロシア双方の軍事予算不足、ひいては経済的不調からくるものなのだろう。

そのように考えると、ロシアがなぜ中国に接近しているか、具体的な理由が見えてくる。

【ロシア情勢】ロシアの新国家安保戦略について①

【ロシア情勢】ロシアの新国家安保戦略について②

でも触れたように、基本的にロシアの安保戦略は「対米国、対NATO」で埋め尽くされている。これを具体的に表すと、核戦力の強化だったり、兵器の更新だったり、NATOのプレゼンスに対抗できる前方展開基地を東欧~中東に確保することである。

そのような前方展開基地の一つにシリアの軍事基地があり、ここを安定化させるために巨額の軍事費を動かさざるを得ない状況におかれている。

このように軍事費を「投下したい場所」がある一方、なるべく軍事費を「投下しなくていい場所」を作りたいと考えるのが外交戦略である。

それが国境を接する中国との関係であり、日本との関係であろうと思う。

歴史を振り返れば、冷戦中の中ソ関係は最悪であり、中ソ対立が起きていた時期は、両国ともに西側諸国との緊張緩和に動いた。

また、第二次世界大戦前夜、「南進(対米英戦争)」か「北進(対ソ戦争)」かで意見の割れる日本軍が「南進」を選択するよう、各種の工作を行っていたことも明らかとなっている。

同時に二正面を相手にしない。というのはロシアの基本方針でもあるようだ。

現に中国とロシアは歩調を合わせる構えをとる一方、日本とも関係改善の余地を残している。


ロシアから見れば、日本は米国とも同盟関係にあることから、日本が米ロ関係、欧露関係を改善に向かわせる労を取っててくれればそれでよいし、何もしないなら何もしないで中国を利用するつもりなのだろう。

このように、シリア問題一つとっても、日本の安全保障と大いにかかわる問題であることが見えてくる。

日本における国防の危機といえば、「中国の海洋進出」であり、「北朝鮮の核ミサイル」の問題であるが、これらの問題においてロシアをも味方に引き入れるだけの胆力のある外交を行わなければならないのではないか。

そういう意味で、日本もある程度、中東の問題や欧州・ロシア関係にコミットしていかなければならない時代が来ているのだろう。





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主な出典

国内:主要メディア各紙(産経、日経、読売、朝日、毎日、など)

アメリカ:CNN、Fox News、Wall Street Journal、New York Times、Newsweek、Washington Post
イギリス:BBC、Times、Independent、
中国:解放軍報、新華社、人民日報
ロシア:PravdaReport、MoscowTimes、Russia Times
イラン:TehranTimes、IranDaily

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