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量子通信まで視野 中国の宇宙開発について

近年、「Odyssey」「Independence Day: Resurgence.」など米国発のSF映画において、中国が国際的な宇宙開発で重要な役割を果たしている描写が多い事に気づかれているだろう。

映画ほど華々しい内容ではないが、現実世界における中国の宇宙開発も極めて活発だ。

地味ではあるが、中国の直近の宇宙開発について、「長征七号」ロケットの打ち上げに関する記事をメインに、時系列を追って紹介する。

◆6月25日付記事
「长征七号运载火箭首飞成功(一面) 我国新一代航天发射场建成并投入使用」
6月25日、海南島に建設された文昌宇宙開発センターからロケットが打ち上げられた。

今回の打ち上げに使用された長征七号ロケットは全長53.1メートル、打ち上げ重量597トン、軌道投入能力13.5トンの性能を持つ。

来年予定される「天舟一号」貨物船の打ち上げに使用されることから、中国版宇宙ステーションを建設するための「天地運輸走路」となる事が紹介された。

また、今回の打ち上げについては、長征七号ロケットの設計と性能や、打上げ場となった文昌宇宙開発センターの能力が検証を目的としていた事が報道されている。

「长征七号成功入轨 “太空巴士”踏上旅程 北京航天飞行控制中心首次实现多目标协同飞行控制」
別の紙面では、宇宙空間に放出されたペイロード内の衛星等の制御に関する記事が掲載されている。

「多目標を同時に監視し、制御することに成功した」事が紹介され、今回の打ち上げで重要な工程であったと紹介している。

「彰显自主创新的中国力量 神箭射苍穹,长空添壮丽。」
今回の「長征七号」の打ち上げは、発射場となった文昌宇宙開発センターにとって初の打ち上げミッションであった。

記事では、文昌宇宙センター初となる打上ミッションの成功が、今後の宇宙ステーション建設に向けた基礎となることを指摘しつつ、中国の宇宙開発が白紙の状態から発展してきたことを称賛する。

記事の中で、中国の宇宙開発をけん引してきた「両弾一星」政策について触れている。
「両弾一星」とは、水爆・大陸間弾道ミサイル(両弾)、人工衛星(一星)のことで、核ミサイル開発と宇宙開発が表裏一体のものとして推進されてきたことを意味する。

つまり、中国における宇宙開発は軍が密接にかかわって推進されてきた歴史があり、「宇宙開発だから平和的」「ミサイル開発だから軍事的」という垣根がなかった事を意味している。

この前提からいえば、先ほどの「多目標を同時にコントロールする」技術の向上によって、
東風41などの多弾頭化された核ミサイルの誘導精度も向上していることが想像されよう。

また、今回の打ち上げについて、国家指導部も関心をもって注目していたことが伺える。

◆6月27日1面
「中共中央 国务院 中央军委 对长征七号运载火箭首次飞行任务圆满成功的贺电」
27日付の解放軍報紙面では、トップ記事として人民解放軍を指揮する最高機関である中共中央軍事委員会から、長征七号ロケットの打ち上げ成功について送られた祝電が掲載されている。宇宙開発は中国の軍事戦略にとっても極めて重要な要素を占めていることがうかがえる。

「海南文昌航天发射场初战告捷 跻身世界先进发射场行列」
海南島に建設された文昌宇宙開発センターでは、静止地球軌道衛星、大質量極軌道衛星、大型宇宙ステーション、貨物宇宙船、新宇宙探査機などの打ち上げが予定され、長征五号、長征七号の運用が計画されている。

また、酒泉、太原、西昌等内陸の打ち上げ場に比べ、赤道に近く三方が海に面していることから、打ち上げ能力について格段に優れているという。

今後は、2016年下半期にエンジンを改良した長征五号を打ち上げ予定のほか、2017年上半期に「天舟一号」貨物船を打ち上げ、将来的には月探査船を三期の工程に分けて打ち上げる予定としている。

中国の宇宙開発を新たなステージ進めるための、重要な打ち上げ場であることがわかる。

◆7月1日2面
「“天源一号”成功完成我国首次卫星在轨加注试验」
今月に入り、先月25日に「長征七号」に搭載して打ち上げられた衛星一つである「天源一号」衛星の記事が登場した。

記事によると、「天源一号」は軌道上の衛星に燃料を供給し、耐用年数を延伸することができる性能を持つ。ちょうど空中給油と同じような形で燃料供給を行う模様。

米国など一部の先進国でしか研究されていない技術について成功を収めたようだ。

◆7月5日3面
「我国未来十年将发射14颗气象卫星」
新華社の記事を紹介する形で、国防科学工業局と中国気象局が共同開催した会議において、中国は今後十年のうちに14の気象衛星を打ち上げる予定であることが紹介された。

中国も気象、海洋、農業、林業、水利、交通、航空、宇宙、環境保全等の領域において衛星からのデータを活用する時代に入っており、防災減災や気候変化への対応、環境保全などでの利用を検討しているとの事。

◆7月10日1面
「天宫二号空间实验室安全运抵发射场」
中国の宇宙ステーションとなる、天宮二号が完成した。7月7日に北京を離れ、鉄道にて酒泉宇宙開発センターへと運ばれた。

本年9月中旬に打ち上げを予定し、2年間の耐用年数を予定している。2名の宇宙飛行士が一月の間実験を行うことができる環境を備えるとされる。神舟11号により、人員を送り届ける予定。

実験内容の詳細については人民日報日本語版を参照頂ければと思うが、注目すべきは「量子暗号」通信の実験であろう。中国は本年下半期に量子通信ネットワーク「京滬幹線」を実用化するためのプロジェクトを進めている。

量子暗号通信が実用化するメリットとしては、例えばハッキングからドローンの乗っ取りを防ぐ効果がある。無人機を軍事転用するうえで欠かせない技術の様にも見える。

→ 宇宙実験室「天宮2号」、実験内容の秘密に迫る
人民日報日本語版 2016年04月05日14:52
http://j.people.com.cn/n3/2016/0405/c95952-9040080.html

→ 暗号通信で“ドローン乗っ取り”を防ぐ、NICTら開発
MONOist 2015年9月28日
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1509/28/news084.html

核開発と宇宙開発の「両弾一星」は、量子通信にまでその成果を得ようとしている。
研究成果に対して予算をつけ、大プロジェクト化するスピード感は一党独裁政権ならではのものだ。

先端技術で水をあけられないよう、日本も宇宙開発・原子力研究分野への十分な投資が必要ではないだろうか。スクリーンでJAXAの活躍も観たいものである。


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主な出典

国内:主要メディア各紙(産経、日経、読売、朝日、毎日、など)

アメリカ:CNN、Fox News、Wall Street Journal、New York Times、Newsweek、Washington Post
イギリス:BBC、Times、Independent、
中国:解放軍報、新華社、人民日報
ロシア:PravdaReport、MoscowTimes、Russia Times
イラン:TehranTimes、IranDaily

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