記事一覧

【ロシア情勢・解説】ロシアの関心はバルカン半島へ移った

7月31日、プーチン大統領がEU・NATOの加盟国であるスロベニアを訪問し、大統領と関係回復について意見交換を行った事が日本でも報じられた。

→ ロシア大統領がスロベニア訪問 EU切り崩し狙いか
日経新聞 2016/7/31 19:47
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM31H17_R30C16A7000000/

スロベニアは1991年に旧ユーゴスラビアから独立したカトリックの小国で、2004年にEU・NATOに加盟している。

日本になじみ薄いバルカン半島のニュースではあるが、この訪問について報道したロシアのPravda紙の記事を見ると、最近のいくつかのニュースに関する「ロシア側の見方」を垣間見ることができる。

本日紹介するのは、「プーチンはロシアの地政学をバルカン半島に移した」と題する記事であるが、本記事からよくわかるのは、「ブレグジット(英国のEU離脱)」などの問題によってEU経済が足踏み状態となってしまったこと自体が、ロシアに復活の自信を与えているという事である。

スロベニアの様に2004年から2007年にかけてEUに加盟した東欧の国々には、「経済圏をロシアからEUに移す」という意図があったが、直後に米国発の金融危機が引き金となった世界的景気後退に直面してしまった。

立て続けにギリシャなどの政府債務問題が浮上したことから、EU加盟によって成長の恩恵にあずかるどころか、逆に財政規律という重石が乗せられる結果となってしまったのである。さらに追い打ちをかけたのが、「ブレグジット」による欧州経済の先行き不透明感だった。

そう言った経済的不満足感の前に忽然と現れたのが、先日ロシアとトルコの間で再浮上した天然ガスパイプラインのサウス・ストリーム計画である。Pravda紙の記事でも、スロベニアはトルコ経由のサウス・ストリームから恩恵を得る旨が指摘されている。

東欧問題の本質とは、「どちらの経済圏に入れば、成長の恩恵に預かれるのか」という経済的側面からも眺めなければならない事を、この記事は教えてくれている。


さらに記事では「テロの脅威に対する連携」を掲げた、欧州とロシアの協力についてスロベニア外相が意欲的であるとのイタリア系メディアの報道を伝え、EU‐ロシアの仲介についてスロベニアは政治的リーダーシップを勇気をもって発揮すべしと訴えている。

どういう事かというと、ロシアとNATOは対立するだけでなく、意外に「センシティブな」領域において協調している面もあり、これを強める役割を果たせというのである。

記事では具体例として、航空宇宙産業、軍需産業を挙げている。

例えばシリアで使用される軍用車両の一部はイタリアのIveco社とロシアのKAMAZ社が提携して制作されているものである事実や、ロシアも米国に対してロケットエンジンの輸出や、シアトルのボーイング工場の存続に力を貸したり※していることが紹介されている。

※ Boeing, Russian company said to be near big 747 freighter deal
The seattle times 2016.6.20
http://www.seattletimes.com/business/boeing-russian-company-reportedly-close-to-big-747-freighter-deal/


次いで、記事は「重要な点は、地域(バルカン半島)の政治的重要性を回復することだ」として、トルコのエルドアン大統領に触れているのだが、この書き方が興味深い。

「エルドアン大統領はバルカン半島に関心を払っている。セルビア人の専門家の同意するところによれば、トルコの“弱い(weak)”エルドアン大統領でさえ、彼自身の国際的な問題について解決するため、バルカン半島の状況を不安定化させようとするだろう。この地域は、ロシアが中東へと向かっていく足場として、際立って重要なのである。」

エルドアンの「彼自身の国際的な問題」とは、ギュレン氏の送還を要求して米国に喧嘩を売ったことであると考えられ、「バルカン半島を不安定化させる」とは、サウス・ストリームの交渉再開によって、この地域にロシアを引き入れることを意味するのだろう。


記事は最後に、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、マケドニア、ブルガリアなどの国にロシアが関心を持っていることを示しつつ、今回のプーチンによるスロベニア訪問は単なる「歴史の書き換え」を狙ったものではなく、「ロシアは地政学的な利益をウクライナからバルカン半島に移した」ということを述べている。

そして、「もう一つの象徴的な事実」として、ドナルド・トランプ大統領候補の妻がスロベニア出身であることを指摘し、「これ以上のサインがあるのだろうか?」と締めくくっている。

→ Putin switches Russia's geopolitics to Balkans
Pravda 2016.8.1
http://www.pravdareport.com/world/europe/01-08-2016/135178-putin_slovenia-0/

本記事が何らかのメッセージを含んだものなのかどうかは不明だが、バルカン半島といえば、歴史的にロシアの南下政策の対象となった地域である。

トルコ情勢の混乱や、ブレグジットに象徴されるEUの衰退によって発生した混乱に乗じて、ロシアの影響力を確保しようという試みはあるのだろうと思う。

しかし、記事のニュアンスからすると、経済的にEUとも協調しながら、ロシアの影響力を回復していこうとする動きのようにも見える。

ともあれ、もし「米露協調」の可能性が残されているのであれば、日本は何としてもこれを仲介し、「中露協調」の可能性を断ちにいかなければならないだろう。







にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

にほんブログ村 ニュースブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ
関連記事
スポンサーサイト

Sponsored Link

ブロマガ

紹介文:ホワイトハウスで公開される、トランプ大統領の公式発言について概要を配信致します。

月刊ブロマガ価格 500円

ブロマガ記事一覧

購入したコンテンツは、期限なしに閲覧いただけます。

プロフィール

eastmedianews

Author:eastmedianews
最新の国際情勢・世界のニュースのまとめ&解説をお届けします。

主な出典

国内:主要メディア各紙(産経、日経、読売、朝日、毎日、など)

アメリカ:CNN、Fox News、Wall Street Journal、New York Times、Newsweek、Washington Post
イギリス:BBC、Times、Independent、
中国:解放軍報、新華社、人民日報
ロシア:PravdaReport、MoscowTimes、Russia Times
イラン:TehranTimes、IranDaily

各国の政府の発表した公開情報

Sponsored Link