記事一覧

【解説】蔡英文インタヴュー② 米台関係に変化の兆しか

引き続き、蔡総統のインタビューを掲載する。

(意訳)
Q: 大陸からの旅行者が減少しているという報告がありますが、観光産業の打撃になりませんか?
A: 我々は多様な国々から旅行者が訪れることを希望しています。

Q:中国はその気になれば台湾に更なる圧力を加えることができます。大陸との結びつきが弱まると恐れさせることで、あなたの外交的盟友の勇気を失わせることができますが、これについて心配はありませんか?
A: もし彼らが経済的な手段による圧力を台湾に適用しようとするのならば、彼らは彼ら自身が支払うべき代価について考えなければなりません。なぜならば、周辺国は中国がどのような手段で台湾に対抗してくるか、注意深く観察するだろうからです。

(中略)

Q: あなたの前任者である馬英九総統は66機のF-16戦闘機をアメリカ合衆国に求めましたが、47人の上院議員が書簡を提出したにもかかわらず、何も起こりませんでした。あなたはこの要求を繰り返すのですか?
A: 最近の情勢において、我々が必要としているのは水上艦艇、潜水艦、それと防空システム、サイバーセキュリティに関する防衛能力です。

Q:馬氏は通常動力型の潜水艦も要求して何も得られなかったと思うのですが、その要求を繰り返すのですね?
A: 我々は潜水艦隊を発展させる努力を続けています。

Q: アメリカの大統領選においては、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプ、どちらがより台湾にとって好ましいと考えていますか?
A:他国のリーダーである米国の大統領選挙に関してコメントすることが懸命だとは思えません。

Q: あなたの政策の中心が国内的―賃金の上昇、余暇の向上―だという事はよくわかりました。しかし台湾の成長率は1%以下です。社会福祉の向上と経済成長をどのように両立させていくのですか?
A: これについて万能薬となる回答はありません。台湾経済は総合的な構造調整を必要としていると考えています。私たちの新たなモデルはイノベーションと調査研究に着目しています。これは製造業を中心とした過去の成長モデルとは異なります。

Q: 中国は台湾最大の交易相手国ですよね?
A: 中国は未だ私たちにとって最大の交易相手国ですが、台湾経済との相補性においては減少しています。私たちは産業を立ち上げる力を持っていましたが、中国の労働力を活用するため、私たちの工場を大陸に移しました。しかし、現在は状況がかなり異なっています。中国の人件費は上昇し、彼ら自身の産業を持っています。
Q: つまり、中国は台湾の競合相手になったと?
A: 彼らはますます競合相手となっています。

(南シナ海へのハーグ裁判所の裁定については、③で取り扱う)

WP紙のインタビューのみだと、蔡総統の切り返しに関して説得力に不安を感じる方もおられると思う。

そこで、蔡総統のインタビューに先立ち、ドナルド・トランプ陣営の政策顧問であるPeter Navarro氏がNational interest誌に寄稿した論文について紹介する。

→ America Can't Dump Taiwan
Washington needs to stop double-dealing with this beacon of democracy.
http://nationalinterest.org/feature/america-cant-dump-taiwan-17040

ナヴァッロ氏は、ニクソン、カーター、クリントン、G.W.ブッシュ、オバマなどの歴代大統領の下で米国が必要以上の配慮を中国にしてきたことを指摘し、その結果今の米国の退潮を招いていると指摘する。

論考では、Shanghai Communique(1972)、Joint Communique on the Establishment of Diplomatic Relations(1979)、Taiwan Relations Act(1979)、Three NOs policy(1994)などの中国との台湾問題について扱った歴代声明を批判している。


興味深いのは、ニクソン以降の台湾(中華民国)を切り捨て、中華人民共和国へと乗り換えていく政策決定の結果が、現在の米国製造業の退潮に結びついているとする見方をベースにしている点だ。

ナヴァッロ氏は、中国が「世界の工場」を演ずる傍らで米国内から雇用が奪われ、5000を超える工場が閉鎖に追い込まれたと指摘する。この点は大統領予備選においてトランプ候補が何度となく述べている主張と一致する。

そのうえで台湾の民主主義について、「アジアの民主主義における指針しての役割と、戦略的なカギとなる同盟として、尊厳と尊敬をもって受け止める価値がある」と書いている。


また、台湾経済が中国のプレッシャーを受けて困難な状態に置かれている現状について、「それを許したのはカーターだ」と断じる。

ナヴァッロ氏は、カーター政権下でのTaiwan Relations Act(1979)の中で、「三戦」を認める考え方があったと指摘し、「tourist boycotts, trade embargo」などがまさにこれに当たることを明らかにしている。

最も興味深いことは、そもそも「一つの中国」という考え方を米国のリーダーは認めてはならないと訴えている点だ。「Shanghai Communique」を注意深く読めば、そこでは「一つの中国」など全く認められていないとさえ指摘する。詳細はぜひ原文をご一読いただきたい。


さらに、ナヴァッロ氏は台湾への武器輸出のみならず、退役軍人を派遣して台湾軍の近代化指導に当たらせたり、台湾の潜水艦増強に関しては日本を関わらせろと提案している。

日本の優れた潜水艦技術の移転を支援することで、台湾防衛だけでなく、「高度な技術で、健全な収入を得る仕事」というメリットが台湾側にあるとも指摘する。

今年は大統領選を前に、台湾問題に関して発言する言論人が増えている。

ランド研究所のMichael J. Lostumbo氏も、「台湾は防空戦略の再考を迫られている」とする寄稿をDefence newsに行っている。

Lostumbo氏は、ミサイルや航空攻撃に対して脆弱な戦闘機を揃えるよりも、対空ミサイル(SAM)を中心とした防空システムに投資をすべきと提案している。

何も対空ミサイルが万能と言っているのではなく、ミサイルの方が戦闘機に比べて残存性が高く、侵略者に対してより長期間足止めをすることができるという観点での提案である。

→ Taiwan Forced To Rethink Its Air Defense Strategy
Michael J. Lostumbo, DefenseNews 2016.4.13
http://www.defensenews.com/story/defense/commentary/2016/04/13/taiwan-forced-rethink-its-air-defense-strategy/82897760/

ナヴァッロ氏も台湾の防空について最後に付言しており、「地域のC4ISRシステムに組み込んでしまえ」とまで提案する。


WP紙のインタビューでは若干頼りなく見えた蔡氏の切り返しも、米国内のこうした動きをキャッチしてのものかもしれないと考えると、見え方が変わってくるように思える。

ナヴァッロ氏のような人物が政策アドバイザーにいるということは、トランプ大統領誕生の暁には日本も台湾に対する相応の防衛協力とリーダーシップを求められることになるのだろう。

台湾との経済交流を活性化し、集団的自衛権を台湾有事に結びつけることができるかどうか。さらに、台湾を「国家」として承認し、自由や民主主義を大陸に流入させることができるかどうか。

地球儀を俯瞰するだけでなく、世界をけん引する日本の使命まで考えることのできる政治を望みたい。




にほんブログ村 政治ブログ 国際政治・外交へ
にほんブログ村

にほんブログ村 ニュースブログへ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ
関連記事
スポンサーサイト

Sponsored Link

ブロマガ

紹介文:ホワイトハウスで公開される、トランプ大統領の公式発言について概要を配信致します。

月刊ブロマガ価格 500円

ブロマガ記事一覧

購入したコンテンツは、期限なしに閲覧いただけます。

プロフィール

eastmedianews

Author:eastmedianews
最新の国際情勢・世界のニュースのまとめ&解説をお届けします。

主な出典

国内:主要メディア各紙(産経、日経、読売、朝日、毎日、など)

アメリカ:CNN、Fox News、Wall Street Journal、New York Times、Newsweek、Washington Post
イギリス:BBC、Times、Independent、
中国:解放軍報、新華社、人民日報
ロシア:PravdaReport、MoscowTimes、Russia Times
イラン:TehranTimes、IranDaily

各国の政府の発表した公開情報

Sponsored Link